今回紹介する論文は、
“The relationship between physical activity and post-operative length of hospital stay: A systematic review.”
ウェアラブルセンサーで測った手術後の身体活動量と入院期間の関係を調べ、術後によく動いている人ほど入院期間が短い傾向がある
といったことを報告している論文です。
※このレビューはがん患者だけを対象にしたものではありません。
肺切除や消化器の手術のほか、心臓・整形外科・血管外科の手術も含みます。
論文には、対象者のうち何人ががんの手術だったかは書かれていません。

ゆた
理学療法士・博士(医学)
大学病院で、がん専門領域のリハビリテーションを行っています
がんリハビリテーション(がんリハ)について、一緒に学んでいきましょう
この記事でわかること
- 手術後の身体活動量と入院期間の関係を調べた、6研究・343人のシステマティックレビュー
- 6研究中4研究で、術後の身体活動が多いほど入院期間が短いという関係があった
- ただし、すべて観察研究で質は低く、「動けば早く退院できる」という因果関係までは言えない
▶ 一般の方向けのやさしい解説はこちら:「手術のあと、よく動く人ほど早く退院できる?」
ウェアラブルセンサーとは?
体に付けて、動きを自動で記録する小さな機器です。
身体活動量計とも呼ばれ、歩数計の高性能版をイメージするとわかりやすいと思います。
今回の6研究では、5研究が加速度計、1研究が姿勢センサーを使っていました。
- 加速度計:体の動きの「加速度」を測り、歩数・活動の強さ・消費エネルギーなどを計算します。1方向だけ測る1軸と、3方向を測る3軸があります
- 姿勢センサー:寝ている・座っている・立っているなど、体の向きを記録します
- 質問票や1回きりの身体機能テストと違い、入院中の活動を客観的に、連続して測れるのが特徴です[1]
システマティックレビューとは?
あるテーマについて、決められた方法で文献を網羅的に集め、一定の基準で選んで、結果をまとめた研究です。
複数の研究の数値を統計的に1つにまとめる方法をメタ解析と呼びますが、今回のレビューでは研究ごとの測り方がばらばらだったため、メタ解析は行われていません。
研究の背景
手術後の回復は、これまで入院期間・合併症・再入院などで評価されてきました[2]。
中でも入院期間は、集めやすく比べやすいため、最もよく使われる指標です。
一方で、手術前の生活機能に戻るのは退院後のことが多く[3]、入院期間だけでは「どれだけ動けるようになったか」はわかりません。
身体活動は、肺炎や血栓などの合併症を減らす手段としても、機能回復の目安としても大切ですが、これまでは質問票や6分間歩行試験のような一時点の身体機能テストで測られてきました[4,5]。
近年、ウェアラブルセンサーで入院中の身体活動を連続して測れるようになりましたが[1]、その値と入院期間の関係は、まだはっきりしていませんでした。
研究の目的
ウェアラブルセンサーで客観的に測った入院中の術後の身体活動量と、入院期間との関係を明らかにすることです。
方法
- 研究デザイン:システマティックレビュー、報告の指針 PRISMA[6] に準拠
- レビュー著者の所属:イギリス、ロンドンの St Mary’s Hospital 外科・がん部門。採用された各研究の実施国ではありません
- 検索:Medline・EMBASE・Cochrane Library、創刊〜2017年1月
- 採用基準:入院中にウェアラブルセンサーで身体活動を測り、入院期間を報告した英語の研究。研究デザインは問わない
- 除外:小児、術前や退院後だけの測定、車いすや家具にセンサーを付けた研究、学会抄録など
- 質の評価:研究の確かさを4段階で評価する GRADE[7] という方法
- 必要なデータがない研究は著者に問い合わせ、生データの提供を受けた2研究は、レビューの著者が再解析しました
結果
- 2,147件から選び、最終的に6研究・計343人を採用しました。平均年齢は約68歳です
- 6研究とも前向き観察研究で、質はすべて「低い」でした
- センサーは6研究すべて異なり、付ける場所は太もも・足首・上腕・腰、測る期間は4〜17日と、さまざまでした
- 身体活動の指標もばらばらで、最も多かったのは1日の歩数で、5研究が使っていました。そのため、メタ解析はできませんでした
表1:採用された6研究と、入院期間との関係(論文の表1・表2と本文のデータをもとに作成、一部抜粋)
| 研究・発表年 | 主な手術 | 人数 | 主な指標 | 入院期間との関係 |
|---|---|---|---|---|
| Browning 2007[8] | 上腹部を切開する消化器の手術、84%ががん | 50人 | 立っている・歩いている時間 | あり:立っている・歩いている時間 uptime が入院期間を予測、r²=0.5 |
| Cook 2013[9] | 心臓の大手術 | 149人 | 歩数 | あり:ICUを出て1・2日目によく歩いた人ほど短い |
| Agostini 2014[10] | 肺切除、対象の93%が肺がん | 99人 | 歩数・活動時間 | あり:活動量が少ない人は長い、中央値6日 vs 5日 |
| Matsuo 2015[11] | 下肢の動脈バイパス | 13人 | 歩数・METs | あり:術後4日目の歩数のみ相関、rs=−0.599 |
| Davenport 2015[12] | 大腿骨近位部骨折の手術 | 20人 | 歩数・活動時間 | なし |
| Schotanus 2016[13] | 人工膝関節 | 10人 | 歩数・活動時間 | なし |
- 6研究中4研究で、術後の身体活動が多いほど入院期間が短いという関係が見られました
- 関係が見られなかった2研究は、どちらも人数が20人以下でした
- Matsuo らの研究は、術後4日目の歩数だけに相関があり、ほかの日や METs では相関はありませんでした
この相関は Matsuo らの論文には載っておらず、Abeles らが元のデータを受け取って解析し直した結果です

肺切除や消化器の切除など、がんリハでもよく関わる手術が含まれていますね。
術後早期から「どれだけ立ち上がって、どれだけ歩けているか」は、回復の目安になりそうです!
結論と研究の限界
結論:術後の身体活動量は、入院期間と負の相関がありました。
ウェアラブルセンサーで集めた客観的なデータは、術後の回復を予測する指標になる可能性があります。
限界・注意点
- 採用はわずか6研究で、すべて観察研究です。研究の確かさを評価する世界共通のものさしである GRADE[7] では、6研究とも「低い」と評価されました。観察研究は、もともと元気な人ほどよく動けたのかもしれないなど、ほかの要因の影響を取り除けないためです
- 相関であって、因果関係ではありません。「動いたから早く退院できた」のか、「回復が早い人ほど動けた」のかは区別できません
- 「身体活動を増やす介入で入院期間が短くなるか」は調べていません
- 手術の種類、センサー、付ける場所、測る期間がばらばら
- 入院期間は、手術の方法や病院の退院方針、本人の希望、退院後の支援なども影響する「代わりの指標」です
- がん患者だけを対象にしたレビューではありません。肺切除や消化器の切除にはがんの手術も多いと考えられますが、レビューには何人ががんだったかは書かれていません。なお、肺切除の研究の原著を確認すると、99人中92人、93%が肺がんでした[10]
- 2017年1月までの研究が対象です
ガイドラインでの位置づけ
日本の「がんのリハビリテーション診療ガイドライン 第2版」[14]には、術後の身体活動量と入院期間の関係を直接扱ったCQはありません。
関係が近いのは次のCQです。
- 肺がん患者に対して、術後に運動療法によるリハビリテーション治療を行うことを提案(第2章 CQ02、2C:弱い推奨、エビデンスの確実性 弱、p.20)
- 消化器がん術後患者に対して、運動療法によるリハビリテーション治療を行うことを提案(第3章 CQ02、2C、p.32)
- 術前については、肺がん(第2章 CQ01、2B、p.16)・消化器がんの腹部手術(第3章 CQ01、2C、p.28)で、術前のリハビリテーション治療が提案されています
このうち肺がんの術前リハでは、入院期間の短縮や術後合併症の減少がアウトカムとして評価されており、エビデンスの強さは B です[14]。
※2026年に同ガイドラインの第3版が発行されています。
本記事は第2版の内容にもとづいています。
臨床での応用 —— 明日からの臨床でどう活かすか
- 術後早期の「離床量」を見える化する:センサーがなくても、離床した時間、歩いた距離・回数、歩数計の値などを毎日記録すると、回復の経過を数字で追えます
- 活動量が伸びない患者に早く気づく:術後数日たっても活動量が増えない場合、痛み・倦怠感・せん妄・不安などの原因を多職種で確認するきっかけになります
- 因果関係は過信しない:「たくさん歩かせれば早く退院できる」とは言えません。活動量は、回復の結果でもあります
- リスク管理を最優先に:術後早期は、バイタルサイン・ドレーン・疼痛・起立性低血圧などを確認しながら、離床の量を少しずつ増やします
- 指標をそろえる:施設内で記録するなら、「術後○日目の歩数」「1日の離床時間」など、測る日と指標をそろえておくと比較しやすくなります
まとめ
- 術後の身体活動が多いほど入院期間が短い傾向が、6研究中4研究で見られた
- ただし観察研究のみで質は低く、因果関係までは言えない
- 術後早期の活動量の記録は、回復の経過を追い、介入が必要な患者に気づく手がかりになる

日々の離床記録も、立派な「回復のデータ」です。
数字で見える化して、チームで共有していきたいですね!
※本記事は論文の紹介を目的としたもので、個別の治療方針は主治医・担当療法士にご相談ください。
参考文献
- Mathie MJ, Coster AC, Lovell NH, Celler BG. Accelerometry: providing an integrated, practical method for long-term, ambulatory monitoring of human movement. Physiol Meas. 2004;25(2):R1-20. doi: 10.1088/0967-3334/25/2/r01
- Neville A, Lee L, Antonescu I, Mayo NE, Vassiliou MC, Fried GM, et al. Systematic review of outcomes used to evaluate enhanced recovery after surgery. Br J Surg. 2014;101(3):159-70. doi: 10.1002/bjs.9324
- Lawrence VA, Hazuda HP, Cornell JE, Pederson T, Bradshaw PT, Mulrow CD, et al. Functional independence after major abdominal surgery in the elderly. J Am Coll Surg. 2004;199(5):762-72. doi: 10.1016/j.jamcollsurg.2004.05.280
- Feldman LS, Kaneva P, Demyttenaere S, Carli F, Fried GM, Mayo NE. Validation of a physical activity questionnaire (CHAMPS) as an indicator of postoperative recovery after laparoscopic cholecystectomy. Surgery. 2009;146(1):31-9. doi: 10.1016/j.surg.2009.02.019
- Moriello C, Mayo NE, Feldman L, Carli F. Validating the six-minute walk test as a measure of recovery after elective colon resection surgery. Arch Phys Med Rehabil. 2008;89(6):1083-9. doi: 10.1016/j.apmr.2007.11.031
- Moher D, Liberati A, Tetzlaff J, Altman DG; PRISMA Group. Preferred reporting items for systematic reviews and meta-analyses: the PRISMA statement. PLoS Med. 2009;6(7):e1000097. doi: 10.1371/journal.pmed.1000097
- Guyatt GH, Oxman AD, Vist GE, Kunz R, Falck-Ytter Y, Alonso-Coello P, et al. GRADE: an emerging consensus on rating quality of evidence and strength of recommendations. BMJ. 2008;336(7650):924-6. doi: 10.1136/bmj.39489.470347.AD
- Browning L, Denehy L, Scholes RL. The quantity of early upright mobilisation performed following upper abdominal surgery is low: an observational study. Aust J Physiother. 2007;53(1):47-52. doi: 10.1016/s0004-9514(07)70061-2
- Cook DJ, Thompson JE, Prinsen SK, Dearani JA, Deschamps C. Functional recovery in the elderly after major surgery: assessment of mobility recovery using wireless technology. Ann Thorac Surg. 2013;96(3):1057-61. doi: 10.1016/j.athoracsur.2013.05.092
- Agostini PJ, Naidu B, Rajesh P, Steyn R, Bishay E, Kalkat M, et al. Potentially modifiable factors contribute to limitation in physical activity following thoracotomy and lung resection: a prospective observational study. J Cardiothorac Surg. 2014;9:128. doi: 10.1186/1749-8090-9-128
- Matsuo T, Sakaguchi T, Ishida A, Yuguchi S, Saito K, Nakajima M, et al. Effect of in-hospital physical activity on cardiovascular prognosis in lower extremity bypass for claudication. J Phys Ther Sci. 2015;27(6):1855-9. doi: 10.1589/jpts.27.1855
- Davenport SJ, Arnold M, Hua C, Schenck A, Batten S, Taylor NF. Physical activity levels during acute inpatient admission after hip fracture are very low. Physiother Res Int. 2015;20(3):174-81. doi: 10.1002/pri.1616
- Schotanus MGM, Bemelmans YFL, Grimm B, Heyligers IC, Kort NP. Physical activity after outpatient surgery and enhanced recovery for total knee arthroplasty. Knee Surg Sports Traumatol Arthrosc. 2017;25(11):3366-71. doi: 10.1007/s00167-016-4256-1
- 日本リハビリテーション医学会 がんのリハビリテーション診療ガイドライン改訂委員会, 編. がんのリハビリテーション診療ガイドライン. 第2版. 東京: 金原出版; 2019. Available from: https://www.jarm.or.jp/document/cancer_guideline.pdf
今回、紹介した論文
● タイトル:The relationship between physical activity and post-operative length of hospital stay: A systematic review.
● 著者:Abeles A, Kwasnicki RM, Pettengell C, Murphy J, Darzi A.
● ジャーナル:Int J Surg
● 発行年:2017(巻44、295-302頁)
● PMID:28689861
● DOI:10.1016/j.ijsu.2017.06.085
▶ ほかの論文紹介も読む:「論文紹介 ― がんリハの研究を1本ずつ読む」

ゆた
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