「がんの治療中は、安静にしていたほうがいいのでは?」
以前はそう考えられていましたが、今は考え方が変わってきています。
今回は、がんの治療中や治療後の方に、どんな運動が、どれくらいすすめられているのかを、海外と日本のガイドライン(専門家がまとめた目安)をもとに、やさしく紹介します。
※この記事は一般的な情報の紹介です。ご自身の治療やリハビリについては、必ず主治医・担当の医療スタッフにご相談ください。

ゆた
理学療法士・博士(医学)
大学病院で、がん専門領域のリハビリテーションを行っています
がんリハビリテーション(がんリハ)について、一緒に学んでいきましょう
この記事のポイント
- がんの治療中・治療後も、できるだけ「動かない時間」を減らすことがすすめられています
- 目安は「少し息がはずむ運動を週150分」と「筋トレを週2回以上」です
- ただし、これは目標です。体調に合わせて、医療スタッフと相談しながら決めましょう
「がんサバイバー」とは?
がんと診断された人すべてを指す言葉です。治療中の人も、治療が終わった人も含まれます。
どんな運動が、どれくらいすすめられているの?
アメリカがん協会のガイドラインでは、次のようにすすめられています[1]。
- がんと診断されたあとも、できるだけ早くから「動かない生活」を避ける
- 少し息がはずむくらいの運動(早歩きなど)を、1週間で合計150〜300分
- または、息が切れるくらいの運動を週75〜150分
- 筋トレを、週に2回以上
- 65歳以上の方も同じ目安です。病気などで体を動かしにくい方は、できる範囲で体を動かし、座りっぱなしの時間を減らすことがすすめられています
日本のガイドラインでも、抗がん剤や放射線の治療中に運動を行うことが「推奨」されています[2]。
運動の「強さ」の目安
運動の強さは、自分で感じる「きつさ」で調整する方法がよく使われます。
| 感じ方 | 強さ | 例 |
|---|---|---|
| 楽である | 弱い | ゆっくり歩く |
| ややきつい | 中くらい | 早歩き、少し息がはずむ |
| きつい | 強い | 会話がしにくいくらい息が切れる |
最初は「楽である」〜「ややきつい」くらいから始めるのが一般的です。
どんな運動があるの?
- 体力をつける運動(有酸素運動):ウォーキング、自転車こぎなど。1回20〜30分が目安です
- 筋肉をつける運動(筋トレ):太もも・お尻・背中・おなか・腕など、大きな筋肉を中心に。自分の体重やゴムバンドを使うと、自宅でも続けやすくなります

「運動」と聞くとハードルが高く感じますが、散歩や、椅子からの立ち上がりも立派な運動です。
運動で期待できること
- 体力や筋力、身の回りのことをする力(歩く、着替えるなど)を保つ
- がんにともなうだるさや痛みをやわらげる
- 生活の質(毎日を自分らしく過ごせること)を保つ
ただし、効果の出方は人によって違います。「運動すれば必ず良くなる」というものではありません。
運動を始める前に・運動中に気をつけること
- 運動を始める前に、必ず担当の先生やリハビリのスタッフに相談してください。がんの種類、治療の内容、骨への転移の有無などによって、避けたほうがよい運動があります
- 次のようなときは、無理をせず運動を休み、担当のスタッフに相談してください
- 強い痛みがある
- 熱がある
- 息切れやめまい、ふらつきがある
- いつもより強いだるさがある
- 血液検査で、血小板や白血球などが少ないと言われている
まとめ
- がんの治療中・治療後も、できる範囲で体を動かすことがすすめられています
- 目安は「少し息がはずむ運動を週150分」と「筋トレを週2回以上」
- まずは今より少しだけ動くことから、医療スタッフと一緒に始めましょう

大切なのは、安全に、そして続けられることです。ご自身のペースで取り組んでいきましょう。
※この記事は一般的な情報の紹介です。ご自身の治療やリハビリについては、必ず主治医・担当の医療スタッフにご相談ください。
▶ 医療従事者向けの詳しい解説はこちら:「がん患者・がんサバイバーに対する運動療法」
参考文献
- Rock CL, Thomson CA, Sullivan KR, et al. American Cancer Society nutrition and physical activity guideline for cancer survivors. CA Cancer J Clin. 2022;72(3):230-262. doi: 10.3322/caac.21719
- 日本リハビリテーション医学会 がんのリハビリテーション診療ガイドライン改訂委員会, 編. がんのリハビリテーション診療ガイドライン. 第2版. 東京: 金原出版; 2019. Available from: https://www.jarm.or.jp/document/cancer_guideline.pdf
▶ 一般の方向けの記事をもっと読む:「一般の方へ ― はじめにお読みください」

ゆた
理学療法士・博士(医学)
大学病院で、がん専門領域のリハビリテーションを行っています
がんリハビリテーション(がんリハ)について、一緒に学んでいきましょう


コメント