がんサバイバーのための栄養と身体活動のガイドライン
運動・身体活動の推奨
米国がん協会(American Cancer Society: ACS)による「がんサバイバーのための栄養と身体活動のガイドライン」1)では、がんの診断あるいは治療後のできるだけ早期から不活動を避け、定期的な身体活動や通常の日常生活活動を行うことを推奨しています。
具体的には、成人では週に150~300分の中等度、もしくは75~150分の高強度の有酸素運動と、週2回以上のレジスタンストレーニングが推奨されています2)。
また、65歳以上の高齢者も同様の身体活動を維持することが推奨されており、慢性疾患などで身体活動に制限がある場合は、不活動の時間をできるだけ避け、能力に応じて身体活動を維持・増進することが推奨されています。
運動療法
運動療法は、レジスタンストレーニング、有酸素運動、またはその組み合わせが推奨されています。
また、FITT(頻度: Frequency、強度: Intensity、持続時間: Time、内容: Type)を考慮してプログラムが設定されています1)。
- レジスタンストレーニング
- 頻度: 週3~5回
- 強度: 最大反復回数の60~70%の強度、または自覚的運動強度であるBorgスケールが14~16(「ややきつい」〜「きつい」)となるように運動を行うと効果的3)
- 持続時間: なし
- 内容: 大きい筋群(膝関節・股関節周囲筋、下腿三頭筋、大胸筋、広背筋、腹筋群、上腕二頭筋・三頭筋)を中心とした筋力トレーニングが推奨
自主トレーニングでは、自重や重錘、エクササイズバンドを用いて簡単かつ効果的で継続可能なトレーニングを行うための工夫が必要
- 有酸素運動
- 頻度: 週3~5回
- 強度: 自覚的運動強度や目標心拍数をもとに設定
低強度: Borgスケールが6~11(「非常に楽である」〜「楽である」)
中強度: Borgスケールが12~13、または最大心拍数の55~70%
高強度: Borgスケールが14~19(「非常にきつい」)、または最大心拍数の71~95%
Borgスケールが11~13、目標心拍数が最大心拍数の80%程度の中等度~高強度の運動においてもリスク管理を行えば安全に実施可能 - 持続時間: 1回の運動の持続時間は20~30分
- 内容: エルゴメータやトレッドミル、ウォーキングなど
- 量−反応関係: がん患者・サバイバー個人の身体機能や運動時のリスク、原疾患や併存疾患の状態や治療状況を確認したうえで、許容される状態であれば高強度のトレーニングも考慮すべき2)
運動療法の効果
運動療法は、運動耐容能、筋力、ADLの改善のみならず、がん関連倦怠感や疼痛などの改善にも効果があります。
これにより、がん患者・がんサバイバーの早期社会復帰やQOL向上にも寄与します。
これらの運動療法は、患者個々の身体機能や運動時のリスク、原疾患や併存疾患の状態や治療状況を確認したうえで、安全かつ効果的に実施することが重要です。
参考文献
- Rock CL, Thomson CA, et al.: American Cancer Society nutrition and physical activity guideline for cancer survivors. CA Cancer J Clin. 2022; 72: 230–262.
- Campbell KL, Winters-Stone KM, et al.: Exercise Guidelines for Cancer Survivors: Consensus Statement from International Multidisciplinary Roundtable. Med Sci Sports Exerc. 2019; 51: 2375-2390.
- Wiskemann J, Dreger P, et al.: Effects of a partly self-adminis- tered exercise program before, during, and after allogeneic stem cell transplantation. Blood. 2011; 117: 2604–2613.
ゆた
理学療法士
2012年 理学療法士免許を取得
2018年 医学博士号を取得
現在は、大学病院で理学療法士として勤務
がん専門領域でリハビリテーションを行っています
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