「手術のあとに肺炎にならないか心配……」
大きな手術を控えた方やご家族から、よく聞く不安です。
今回は、手術の前に6分間でどれだけ歩けるかが、手術のあとの肺のトラブルと関係していたという海外の研究を、やさしく紹介します。
※この記事は研究の紹介です。
ご自身の治療やリハビリについては、必ず主治医・担当の医療スタッフにご相談ください。

ゆた
理学療法士・博士(医学)
大学病院で、がん専門領域のリハビリテーションを行っています
がんリハビリテーション(がんリハ)について、一緒に学んでいきましょう
この記事のポイント
- がんの大きな手術の前に「6分間歩く距離」を測った、インドの研究です
- 手術のあとに肺炎などの肺のトラブルが起きた人は、手術の前に歩けた距離が短い傾向がありました
- ただし、歩く距離を伸ばせば肺のトラブルが防げるかどうかは、まだわかっていません
そもそも「6分間歩行」とは?
6分間歩行は、平らな廊下を、自分のペースで6分間歩いて、どれだけの距離を歩けたかを測る検査です。
走る必要はなく、疲れたら途中で休んでもかまいません。
特別な機械がいらず、日常生活に近い体力を知ることができます。
そもそも「手術のあとの肺のトラブル」とは?
全身麻酔で大きな手術を受けると、しばらく深い呼吸がしにくくなったり、痰が出しにくくなったりします。
そのため、手術のあとに肺炎や、肺の一部がしぼんでしまう無気肺などが起きることがあります。
この記事では、こうしたものをまとめて「肺のトラブル」と呼びます。
どんな研究?
- インドのがん専門の病院で行われた研究です
- 胸やおなかの大きながん手術を受けた75人を調べました
- 60歳を超える、心臓や肺の病気がある、たばこを吸うなど、肺のトラブルが起きやすい人たちが対象でした
- 手術の前に6分間歩行を行い、手術のあとに退院するまで、肺のトラブルが起きたかどうかを調べました
わかったこと
- 手術のあとに肺のトラブルが起きたのは、75人中35人、およそ2人に1人でした。
いちばん多かったのは肺炎でした - 肺のトラブルが起きた人は、手術の前に6分間で歩けた距離が平均344 mで、起きなかった人の平均442 mより約100 m短い結果でした
- 歩けた距離が390 m以下の人ではおよそ4人に3人に肺のトラブルが起き、390 mより長く歩けた人ではおよそ6人に1人でした
- 肺のトラブルが起きた人は、入院の日数も長くなっていました
- 75人全員が、問題なく6分間歩行を終えることができました

手術の前に「どれだけ歩けるか」が、手術のあとの肺のトラブルの手がかりになるかもしれない、という結果ですね。
この研究から言えること・言えないこと
言えること
- 手術の前に歩ける距離が短い人ほど、手術のあとに肺のトラブルが起きやすい傾向がありました
- 6分間歩行は、短い時間で安全に行える検査でした
言えないこと
- 歩く距離を伸ばせば、肺のトラブルが防げるとまでは言えません。
この研究は、関係を調べただけだからです - 「390 m」という数字は、この研究の中での目安です。
決め方もはっきり書かれておらず、どの人にも当てはまる基準ではありません - インドの1つの病院で、肺のトラブルが起きやすい人だけを調べた研究です。
日本の病院や、ほかの手術を受ける方に同じことが言えるかはわかりません
治療中の方・ご家族へ
- 手術を控えている方は、「手術の前に、体力を確かめる検査はありますか」と、担当の先生やリハビリのスタッフに聞いてみましょう
- 手術の前にできる呼吸の練習や、体を動かす工夫について、相談してみるのもよいと思います
- 自分だけで無理に長い距離を歩こうとするのは避けましょう。
次のようなときは、無理をせず休み、担当のスタッフに相談してください- 強い痛みがある
- 熱がある
- 胸が痛い、息切れが強い
- めまいやふらつきがある

手術の前の時間は、不安も大きいと思います。
できることを一緒に考えていけるよう、気になることは遠慮なく医療スタッフに伝えてくださいね。
まとめ
- 手術の前に6分間で歩けた距離が短い人ほど、手術のあとに肺のトラブルが多い傾向がありました
- ただし、歩く距離を伸ばせば防げるかはまだわかっていません
- 手術の前にできることは、必ず主治医や担当のスタッフと相談しましょう
※この記事は研究の紹介です。
ご自身の治療やリハビリについては、必ず主治医・担当の医療スタッフにご相談ください。
▶ 医療従事者向けの詳しい解説はこちら:「がん手術前の6分間歩行で、術後の肺合併症を予測できる?」
今回、紹介した論文
● タイトル:Performance in 6-min walk test in prediction of post-operative pulmonary complication in major oncosurgeries: A prospective observational study
● 著者:Sathyaprasad SL, Thomas M, Philip FA, Krishna KM
● ジャーナル:Indian J Anaesth
● 発行年:2020(巻64、号1、55-61頁)
● PMID:32001910
● DOI:10.4103/ija.IJA_533_19

ゆた
理学療法士・博士(医学)
大学病院で、がん専門領域のリハビリテーションを行っています
がんリハビリテーション(がんリハ)について、一緒に学んでいきましょう


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